冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
人に対しての発砲はそれが初めてで、一瞬、躊躇してしまったそうだ。

『あの時、犯人より先に自分が引き金を引いていれば……』

葵の父は死なずにすんだだろうと、悔恨の表情で彼は語った。

まだ十三歳だった葵に対し、すべてを打ち明けて謝罪してくれたのは彼だけだ。

ごまかしの説明や殉職を賞賛するような言葉、その陰で犬死になどと話す幹部より、よほど誠実で信頼できた。

きっとその時から、大和の人柄に惹かれている。

この人は味方だと感じ、絶望の中で光を見た心地がしたのをよく覚えている。

それがはっきりとした恋愛感情に変わったのは二年ほどあとのことだ。

「お前はなにしてた?」

あぐらを組み直した彼に、今日一日の過ごし方を問われた。

興味を持ってもらえて嬉しいが、顔に出さずに素っ気ない返しをする。

「いつも通り」

「具体的には?」

「そういうのはいいよ。心配されるような出来事はなかったから。ねぇ、お腹空いた。注文はすんでる?」

十歳年上の他人である大和に生意気な口を利けるのは、十三年間の浅くないつき合いの賜物だ。

父を亡くし、高齢の祖母とふたり暮らしになった葵を、彼は親身になって支えてくれた。

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