冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
「偽物は少しも喜べない。その写真はすぐに消すんだ」

悲しそうな顔をした藪が、椅子の上で膝を抱えた。

繊細な性格なのでこれ以上の注意には耐えられないだろうと判断し、話題を変える。

「昼食はとったのか?」

「いらない」

「頼むから食べてくれ。弁当を手配する」

藪の部屋を出ながら葵を想う。

(コラージュ写真の葵、きれいだったな)

正直に言うと、純白のウェディングドレスがよく似合っていてずっと眺めていたかった。

携帯をハッキングされたのはいただけないが、幸せな未来を覗いた気分になれたのも事実だ。

消去を指示したのが惜しい気持ちにさせられる。

(いつか現実で見られる日が来るだろうか?)

ぼんやりと夢見心地になりかけたが、対策室に入ると緊張感を取り戻した。

(縞森菜美恵に近づくなと、葵に言っておかなければ)

菜美恵の夫の逮捕の日付を決める段階に来ている。真上の部屋で捜査が行われていたと勘づかれたら、逆恨みをした菜美恵が葵になにかするかもしれない。可能性として懸念していた。

次に捜査一課に電話をかける。

『はい、井坂です』

「加賀見だ。話があるんだが、十六時までの間に三十分ほど時間を作ってくれ」

話とはもちろん事件についてだ。

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