冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
それなのに電話口の声が妙に楽しげに変わった。

『ついにというか、やっとそうなったという報告? 俺のおかげだよな。感謝の言葉はいらないけど、酒の一杯くらいは奢ってよ』

「なにを言ってる?」

『あれ、葵ちゃんの話じゃないの? 同棲までしておいて、まさか、なにも進展してないとか?』

「切るぞ」

『冗談くらい言わせてくれよ。逮捕の決行日の相談だろ?』

文句を言う井坂に呆れつつも、痛いところを突かれたと思っていた。

一週間ほど前に添い寝券は使ったが、葵の気持ちが自分に向くまでは手を出せない。

今の関係で交際を求めれば、下心があったのかとショックを与えそうな気がした。

毎晩、欲望をこらえている状況については聞いてくれるなという気持ちだが、井坂には感謝もしている。

お節介を焼いてくれなければ、今でも葵を妹扱いしていたことだろう。

そしていつか他の男に奪われてから、愛しさに気づいて後悔するのだ。

その前に気づかせてくれた友人には、お礼の意味を込め、葵の心を手に入れられた時に報告しようと思った。

「進展したら、教える」

『えっ、彼女のことだよね。てか、本当に加賀見? 信じられないから、今からそっちに行くわ』

誰かが音声変換装置でも使って話しているのかと思ったのだろうか。
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