冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
十歳年下の恋人の鼓動を最高潮まで高めておきながら、大和はひとり口角を上げて颯爽と玄関を出て行った。



それから半日が過ぎて外灯が灯る頃、葵はターゲットを尾行していた。

秘書に頭を下げて見送られ、大手食品会社の玄関から出てきた元官僚の名は安岐村(あきむら)。健康そうな肌艶のやや恰幅のいい男性だ。

白髪交じりの頭髪の六十三歳で、顔つきは自信に満ちている。

(偉そうにしていられるのも今のうちだよ)

安岐村が乗り込んだタクシーを愛車で追いかける。

調査を始めたばかりなので、ターゲットの日常的なスケジュールを調べている段階だ。

タクシーは十五分ほど走って、繁華街の裏通りにある蕎麦屋の前で停車した。

古そうな二階建ての和風の外観で、間口は狭く、のれんはかなり色あせている。

食べに来たのだと思われるが、なぜこの店を選んだのか気になった。

自宅からも職場からも離れている上に、名の知れた店ではない。

(馴染みの店? もしそうなら、店の人になにか話を聞けるかも)

降車した安岐村が店に入ってから、少し時間をおいて葵も引き戸を開けた。

「いらっしゃいませ」

だしと醤油のいい香りに包まれて、空腹の胃袋が刺激される。

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