冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
「今、ホッとしたよね? 私に狙われなくてよかったと思ったでしょ。諦めてないじゃない」

「ち、違うよ。大和さんとどうこうなりたいと思ってないから。憧れのお兄さん? うん、そんな感じ。このまま妹ポジションをキープできればいいと思ってる」

「嘘ばっかり。自分の恋愛エッセイでも書いたら? 少しは素直になれそう。タイトルは『絶賛片想いこじらせ中』だね」

(えっ、私、こじらせてるの……?)

それは認めたくないが、片想いが長びくほど今の関係を壊すのが怖くなり、しかし叶わない願いのせいで胸がどんどん苦しくなっているのを自覚していた。



空にはいわし雲が浮かんで穏やかな日差しが降り注いでいる。

沢と会った日の翌日、思い出の詰まった住まいに別れを告げた葵はワンルームの三階建てアパートに引っ越した。

前に住んでいたマンションからは電車で二十分ほどの距離にあり、都内では比較的地価が低い。家族用の間取りから八畳のワンルームに変えたのでかなり狭く感じるが、その分、家賃は半分ほどに下がった。

築年数は古いけれどリフォームしてあるので水回りや壁紙がきれいで気に入った。

これで過度の節約をしなくても暮らしていけると思いたい。

引っ越し業者が引き上げた部屋で、葵はひとつ目のダンボール箱を開けた。
< 36 / 218 >

この作品をシェア

pagetop