冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
「事件についてはわかり次第、情報共有するけど、俺が聞きたいのはそれじゃない。加賀見の眉間に皺が寄っていたからさ。機嫌の悪さを隠せないほどのことがあったんだろうと思って。葵ちゃんとなにかあった? まさかとは思うけど、フラれた?」

井坂は葵を知っている。

三年ほど前、葵と寿司屋から出たところで偶然、鉢合わせたからだ。

月に一度の会食に、無理やりついて来られた時も二度ある。

その時に、殉職した元上官の娘だと話さざるを得なかったのだが、長きに渡る葵との交流を隠していたのはなぜかと面白がられた。

『自分好みに育ててから美味しくいだだこうという魂胆か。硬派を気取ってる加賀見に、そういう性癖があったとは』

もちろん男女の仲ではないとすぐに否定した。

葵の父の殉職に責任を感じている。

拳銃を所持した犯人と対峙した時、自分が先に発砲していたなら葵は父親を失わずにすんだだろう。

それからずっと強い悔恨を引きずっていて、当時の悪夢を今でも見る。

せめてもの償いにと遺族に手を差し伸べてきたが、葵が成長し、見守り役を下りてもいい年頃になってもやめられない。

職業の選択からして危なっかしく心配が尽きないから――というのは建前で、手放したくないという気持ちがあるのを自覚していた。

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