冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
「嘘はいけないな。葵ちゃんとはそういう関係じゃないと、お前が言ったんだろ。何度聞いても好きだと認めない。天才と言われてるくせに自分の本心もわからないとはな。それとも色恋だけ疎いのか?」

大和は飛び抜けて優秀だと上官から評価されている。

有無を言わせぬ実績があるから、出世に関しては敷島だって文句を言えないだろう。

警察組織内で一目置かれた存在の大和をからかうのは井坂くらいのものだ。

頼んでもいない恋愛指南をして面白がっているのだとわかっているのに、なぜか井坂の言葉が胸に刺さった。

(俺の本心……)

警察官の宿命で、これまで何度も目を覆いたくなるような人の死を目撃してきた。

遺族の泣き叫ぶ声を聞くと、大和まで悲しみや怒りに飲まれそうになる。

けれども心を揺らしていては捜査に支障が出るため、制御しにくい感情は箱に入れて鍵をかける習慣がついていた。

葵への想いも鍵付きの箱に入れてしまったのだろうか――ふと思ったが、即座に否定する。

(違う。それだとまるで、葵に恋愛感情があるかのようだ)

よこしまな想いを抱いてしまえば、贖罪にならない。

葵を支えてきた十三年間が汚れてしまう気がした。

からかうなと言っても井坂には通じないと思うので、話の方向を少々ずらす。

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