冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
「葵が俺に相談せずに引っ越したんだ。なにかあったと言えば、それくらいだ。セキュリティが低いから、インターホンを取り換えて鍵を追加し、窓にシャッターをつけただけなんだが。その結果、迷惑顔で追い出されたんだよ。心配するほど葵は反発する。難しい年頃だ」

ため息をつくと、井坂が声を上げて笑った。

「子供じゃないのに、って言われたのか?」

「笑うな。葵は放っておいてほしいようだが、自分は大人だから大丈夫だと思っているところが危ない。この前も――」

多野元という政治家の汚職スクープを狙って尾行している話を葵から聞いた。

それ自体も安全とは言えないが大目に見るとして、多野元に接触していた留学生の話で追尾に待ったをかけた。

その留学生は美人でアジア系外国人風だったという。

政治家や官僚、自衛隊、企業の役員や研究職の社員などを狙って機密情報を得ようとする、外国の諜報員がいる。

四年間、公安を指揮してきた大和の経験から、多野元に近づいた留学生にスパイの可能性を感じたのだ。

同じ庁舎で働いていても、他部署の警察官に公安は調査中の情報を明かさない。

政治家の名前は伏せて井坂に大まかな事情を伝えると、途端に顔つきが引き締まった。

大和の狙い通り、からかうのを忘れてくれたようだ。

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