冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
ここからは遠いので違うかもしれないが、他に有力な行き先を思いつけなかった。

三十分ほど走ってホテルに着くと、見失った黒塗りのタクシーが止まっていた。

(本当にいた!)

沢の情報では密談をする際には従業員用の出入口を使うそうだが、タクシーは堂々と正面玄関前に停車している。

その違いは気になったが、降車した多野元を見てやはり今夜なにかあると確信した。

乗り込む時にはスーツ姿だったのに、今はラフな服装をしている。

どうやら車内で着替えたようだ。

黒い帽子にマスクまでして顔を隠し、周囲を見回してからホテル内に入って行った。

急いで追いたいところだがその前に、目立たない場所に愛車を止め、葵も軽く変装する。

マウンテンパーカーを脱いでリュックから出したベージュのコートを羽織る。

伊達眼鏡をかけ、結んでいた髪を下ろした。

一見普通のリュックは、裏返すとボストンバッグに早変わりする。

尾行の七つ道具というほどのものではないが、今のようにホテルに入る時は旅行者を装えるので便利だ。

あとは東京観光の雑誌を片手に持ち、ホテルに駆け込む。

ロビーで周囲を見回すと、フロントのカウンター前で従業員と話している多野元を見つけた。

(あれ? 部屋の鍵を受け取ってる)

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