冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
ホテル内の割烹料理店やレストランには行かないのだろうか。

葵が狙うのは贈賄側の企業の役員と多野元が並んでいる写真だ。

いくらマスコミに撮られたくないからと言っても、ホテルの部屋で会うものだろうかと疑問に思う。

けれどもスクープ欲しさに深く考えないようにした。

カードキーを受け取った多野元が振り向いたので、葵は携帯電話を耳にあて電話中のふりをする。

「着いたよ。ロビーで待ってる。え、部屋まで行くの? わかったよ。少し待ってて」

エレベーターホールに向かう多野元を追う。

葵を警戒している様子はないため、同じエレベーターに乗り込んだ。

「何階ですか?」と聞かれたので、作り笑顔で「七階です」と答えた。

視力は両目とも二.〇だ。

フロントで多野元が受け取ったカードキーに【730】と書かれていたのが見えていた。

「同じ階ですね」

多野元の手で階数ボタンが押されたあとはなにも話さない。

エレベーターは静かに上昇し、七階でドアを開けた。

お先にどうぞというように揃えた指先を廊下に向けられ会釈して降りたが、多野元に先に行ってもらわなければ都合が悪い。

それで数歩進んだ所でわざと観光雑誌を落とし、もたもたと拾うことで彼の後ろに回れた。

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