冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
二股の分かれ道までくると、油断させるために彼とは逆方向へ進路を取る。

離れたふりをしてすぐに引き返し、こっそりと尾行を続けた。

コートの右ポケットに入っているのは望遠機能や暗視機能がついた小型の高性能カメラで、いつでも取り出せるようにポケットに手を入れていた。

(お願い、今日こそ私にスクープを)

途中に自動販売機とソファが置かれたスペースがあり、その先は廊下の様子が変わった。

踏みしめている絨毯も部屋のドアも豪華になり、細身な葵なら中に入れそうな大きな壺や絵画が飾られている。

どうやら同じ階でもグレードの高い部屋が並んでいるようだ。

多野元が730号室の前で足を止め、インターホンに指を伸ばす。

(部屋に誰かいるの? あ、そうか)

カードキーは宿泊者の人数分もらえるから、企業側は先に来て待っているのだろう。

ということは中にいる人が、インターホンに応えてドアを開けた瞬間がシャッターチャンスだ。

近くの壺の陰に素早くしゃがんだ葵は、カメラを出して構える。

多野元との距離は八メートルほどで、視線を左右に向けて誰もいないことを確認してからインターホンを押していた。

レンズを覗く葵の手は汗ばみ、期待と緊張で動悸が加速する。

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