冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
いよいよだと生唾を飲み込んだ次の瞬間、内側からドアが開き顔を覗かせたのは――見覚えのある女性だった。

(あの時の美女!?)

先月、喫茶店で多野元と話していた留学生が、彼の首に腕を回して抱きついた。

「やっと会えた。遅いから、来てくれないかと思ったわ」

「待たせてごめん。マスコミにつけられては困るから、遠回りして来たんだ」

反射的にシャッターを切ってしまったが、不倫記事は書かない主義なのでいらない写真だ。

(尾行を警戒していたのも、マスクで顔を隠しているのも、このため?)

期待外れの密会相手を目の当たりにして、音に出さずにため息をついた。

それにしても美女と本当に親密な関係になっていたとは驚きだ。

『やっと会えた』と言っていたから、電話やメールで関係を深めていたのだろう。

喫茶店でふたりを目撃してから半月ほどしか経っていない。葵の感覚からすると恋人関係に発展するのが早すぎだ。

(私は大和さんと出会って十三年間、なにもないのに)

自分と比較しても不愉快になるだけなので、これ以上、密会現場を見たくない。

けれども隠れているので立ち去れず、美女の甘ったるい声を聞くしかなかった。

「ずいぶん待ったのよ。お詫びにキスが欲しいわ」

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