冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
大人の女性として見てくれる日は一生来ない気がして落ち込んでいると、「おい」と近くから呼びかけられ、心臓が口から飛び出しそうになった。

仰ぎ見ると、呆れ顔の大和が腕組みをして立っている。

多野元と同じように、大和もいったん部屋に戻ると思っていた。

見つかれば尾行について叱られるに決まっているので、その隙に帰るつもりだったのだが、いつから気づいていたのだろうか。

「どうしてわかったの?」

「気づけないようじゃ廃業だろ。特に葵の匂いはすぐわかる」

思わず髪や服の匂いを嗅ぐ。

香水はつけない主義なので、汗臭いのではないかと気にした。

「気配のことだ」

勘違いに笑ってしまったが、彼の眉間に皺が寄ったので首をすくめた。

「危険だと言ったはずだが」

「だって、なにが危険なのか教えてくれなかったから……」

まさか美女が某国の雇われスパイだと思わなかった。

こちらとしてはスパイ活動を邪魔する気がなくても、そう思われてなにかされたら恐ろしい。

「ごめんなさい」

咎めるような目で見られて素直に謝ったが、仕事なので二度と政治家を尾行しないとは言えない。

ただし、大和に止められた時だけは本当に危険なのでやめようと思った。

腕を掴まれて立たされる。

「部屋に入れ」

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