冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
一度しぼんだ勇気は戻りそうになく、不満でも頷くしかない。

「五分後にここを出よう。外まで送る」

「うん……」

恥ずかしさや気まずさをごまかしたい。舌先を覗かせへへッと笑って見せると、彼も少しだけ笑ってくれた。

これでいいことにする。今の関係が壊れて、会ってくれなくなるのは怖いから。

(嘘つき。このままでいいなんて、本当は思ってないでしょ?)

相反するのにどちらも本心なので、大和にどう接していいのかもわからなくなりそうだ。

五分経って部屋を出る時に、使わなかったベッドをチラッと気にした。

「行くぞ」と歩みを促され、背中に手を添えられる。

いつだって頼もしく導いてくれるその手に、兄以上の想いがあればいいのにと思っていた。



ホテルで大和と会った日から二週間ほどが過ぎた。

時刻は間もなく二十時で、駐輪スペースにスクーターを止めた葵は寒空から逃げるようにアパートの玄関に入った。

目の前には三段の階段があり、左横には二階と三階の住人の郵便受けが並んでいる。

葵の部屋は205号室で、自分の部屋の郵便受けを開けた。

入っていたのは過去に一度だけ利用した美容室のダイレクトメールと、チラシが数枚だ。

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