冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
転職を繰り返していた久地は社会への不満を募らせていたようで、通っていたガールズバーの従業員が、『こんな世の中はおかしい。誰も俺を理解してくれない』と愚痴をこぼしていたと証言している。

サバイバルゲームのサークルに所属していないかを調べるように命じたのは、久地の自宅から黒焦げになった軍服十二着とモデルガン五丁を押収したからだ。

年上の部下からの報告は続く。

「サークルメンバーで今も久地と交流のある人物はいません。過去のメンバーを洗っている最中です」

コピーしてきたという名簿を渡されたが、きちんとしたものではなかった。

本名ではなくサークル内の呼び名で載せられていたり、連絡先にSNSのアカウント名しか書かれていなかったりと、掲載されている六十二人全員の所在を突き止めるのは時間がかかりそうだ。

「ご苦労様。引き続き、サークルメンバーの捜査にあたってくれ。それとは別方向からの捜査も始まる。人員が足りなければ言ってくれ」

「別方向とは?」

「先ほど他のデータも復活した。オンラインの戦闘ゲームに頻繁にアクセスした記録が残っていたんだ。その交友関係も洗わなければならない」

「了解しました」

部下が離れていき、名簿をパラパラとめくっていると、葵という名前を見つけて心臓が跳ねた。
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