冷血硬派な公安警察の庇護欲が激愛に変わるとき~燃え上がる熱情に抗えない~
「いいよ。戦闘ゲームのパスワードはここに書いてあるやつ。ユーザーネームはゲンスイ」

「元帥か。なるほど」

軍の最高階級を表すその名は、いかにも久地が好きそうだ。

藪がもう一台のパソコンの画面を指さす。

「こっちはゲンスイとチームを組んでプレイしていたユーザーたち。全部で三十五人いるけど、よく一緒にやってるのは五人。ゼブラ、ヤマモト、ユイユイ、ファルコン、フィリップ」

(ゼブラ?)

先ほど受け取った名簿の、葵という名の人物の下にもゼブラがいた。

(戦闘好きが狩られる対象の草食動物の名を選ぶのは珍しい気がする。ということは、同じ人物か?)

「ゲンスイのゲームの成績もいる?」

「それはいらない。ゼブラが気になるんだが、特定できないか?」

「楽しそうだね。やってみる」

にっこりと弧を描いたその目に画面の文字列が流れる。

読めないほどのスピードで画面を流したかと思うと、ピタッと止めてキーボードに指を走らせる。

恐らく藪には正義のために捜査しているという感覚はないだろう。

得られた情報にも興味はない。ハッキングするのを純粋に楽しんでいるだけだ。

「ねぇ、お腹空いた」

「なにが食べたい?」

「チョコパイ」

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