春待つ彼のシュガーアプローチ
「お前は確か1年の氷乃瀬……だっけ?この手を離してくんない?痛いんだけど」


淡々とした口調。


でも先輩の表情は少し歪んでいた。


「部室に女を無理やり引きずり込もうとしていたヤツをむやみに解放するとでも?」


「もう何もしない。約束するから離してくれ!」


顔を大きく引きつらせる先輩。


渋々といった様子で手を離した氷乃瀬くんは先輩と私の間に割って入るように立った。


「……ったく、普段と違って閑散としている部室棟なら誰にも聞かれないと踏んでいたのに、まさか邪魔が入るとは思ってなかったよ」


「俺も学校で本性を曝すセンパイが見れるとは思っていませんでした。とうとう化けの皮が剥がれましたね」


「今日のことは秘密にしといてくれない?」


お願いをしているというより、脅しているような恐怖を感じる声に肩をすくめる。


でも氷乃瀬くんに動じている雰囲気はなく、なぜかポケットからスマホを取り出した。


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