春待つ彼のシュガーアプローチ
「氷乃瀬くん!?もう帰ったとばかり思ってた」
「いや、ちょっと事務室に寄ってたから。それで用事を済ませて帰ろうとしたら、廊下で同じクラスの女子に声を掛けられて、陽咲が話したいことがあって5組に来ていたことを聞いた」
早速、伝えてくれたんだ。
心の中で萌絵ちゃんに感謝した。
「それで、俺に話って?」
「バレンタインの日にホットココアをくれたでしょ?危ないところを助けてもらった上にココアまで奢ってもらうのは、さすがに甘え過ぎだと思ったので代金をお返ししたいなと…」
お金を渡そうとすると氷乃瀬くんからフッと笑い声が零れた。
「そんなこと初めて言われた」
「えっ?」
「陽咲は律儀だな」
「べっ、別に私は当然のことをしているだけだよ」
「そっか。でもココアに関しては、飲んでもらいたいと思って俺が自発的に買ったものだから、お金は返さなくていいよ」
「……うん、分かった」
これ以上、無理に渡そうとするのは逆に氷乃瀬くんを困らせるだけのような気がする。
だけど、色々と一方的にお世話になったにも関わらず、お礼の言葉しか返せないのも心苦しい…。