春待つ彼のシュガーアプローチ
「そっか、あの時に話してくれていたんだ…」
「なんか会話が噛み合ってたから、陽咲が上の空っぽく見えたのは気のせいかなと思ったんだけど、やっぱりその部分は聞いてなかったか」
「す、すみません…」
その後、程なくしてやって来た電車に乗り込んだ私たち。
氷乃瀬くんから真相を聞いた途端、恥ずかしさと申し訳なさで居たたまれない気持ちになってしまった。
どうやら“転居するけど転校はしない”ということを、プリントを届けに行ったあの日に説明してくれていたらしい。
でも、突然引っ越すことを聞いて驚いた私は、その大事なところを聞き逃していたのだ。
“陽咲、どうした?”
まさか、あの直前に話していたとは。
考えてみれば、氷乃瀬くんから“転校”という言葉は一度も出ていなかった。
私が引っ越し=転校だと勝手に思い込んでただけなんだよね。
なんという失態。
今後は気を付けなくちゃ。