春待つ彼のシュガーアプローチ

「ところで、氷乃瀬くんはどうしてあんなに驚いていたの?」


「陽咲はバス通学だと思っていたから」


思わぬ言葉に瞬きを繰り返す。


高校の最寄り駅まで電車、そこからは徒歩。
今までバスで通学したことは一度もないのに…


あっ!


私の頭の中に一つの心当たりが浮かんだ。


「もしかして、サンドイッチ屋さんに行った帰りに私がバスに乗るって言ったから?」


「うん。陽咲が走って行った後、工業団地行きのバスが停留所に向かうところを見たから、あれに乗って帰宅するんだと思って」


私の言葉が誤解を生む原因だったのか。


「あの日は市立図書館に行きたくて乗ったんだ。希少な本があるから学校帰りにたまに利用しているの」


「マジか。実はそれ以前にも、登校してきた時に停留所から歩いてくるバス通学の集団と校門のところで遭遇したことがあってさ、その中に陽咲もいたんだけど」


「それはその…タイミングが被っただけと言いますか」


「タイミング?」


「朝…駅前から歩いて来ると、高校前の停留所でバスを降りてきた人たちと合流することがよくあるんだよね」


確かに、端から見たらバス通学だと誤認してしまうような状況かもしれない。


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