春待つ彼のシュガーアプローチ

そうだ。
クラス替えをしたわけだし、席も変わるよね。


黒板のところに何人か生徒が集まっているし、あそこに座席表が貼られているのかな。


廊下側の通路を抜けようとした時、不意に手首を掴まれた私は驚いて振り向く。


誰かと思えば、氷乃瀬くんで。
机に頬杖をつきながら私を見上げていた。


「陽咲の席、ここだよ」


そう言って指差したのは氷乃瀬くんの前の席。


ということは五十音順で並んでるのかな…。


入学した時と同じで最初は出席番号順か。


新しいクラスでは私の次が氷乃瀬くんになるわけね。


いやいや、今はそんなことはどうでもよくて。


「お、同じクラスなの!?」


「そうみたいだね。席も近いし、よろしくな」


もしかして、さっき萌絵ちゃんが言おうとしていたのは、このことだったのでは?


あの時の声、結構弾んでたし。


「突っ立ってないで座ったら?」


心なしか、ちょっと楽しそう。


廊下側から2列目の一番後ろ。


この席だと氷乃瀬くんが好きな女の子たちの溜まり場になりそうなものだけど、憂鬱じゃないのかな。

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