春待つ彼のシュガーアプローチ
「陽咲、コイツの距離感は昔からバグってるから嫌なら“ウザい”って遠慮なく言いな?」
「ひっっど!!第一印象が大事だってのに、積極的に下げようとすんなよ~」
それにしても、この二人。
わりと仲良さそう。
「氷乃瀬くんと鷲峯くんは友達なの?」
「うん!俺と灯は同中でクラスも一緒だったんだよ。あの頃は、よくつるんでたよな~」
「そうだっけ?」
「っていうかさ、お前の方から女子に話しかけて、普通に喋ってる光景とか超久々に見たわ」
「あっそ」
「だってほら、灯って以前は女子にも優しかったじゃん。特にスミちゃんには……」
その瞬間、氷乃瀬くんはガタッと勢いよく椅子から立ち上がった。
「賢哉には関係ないだろ」
感情的ではなく、無機質な声。
どんよりとした重い空気を残したまま、彼は教室を出て行ってしまった。
「アイツ、今もまだ……」
気まずそうに唇を噛んでいた鷲峯くんだけど、私に視線を向けた途端、さっきまでの明るい笑顔に切り替えた。
「朝から空気悪くしちゃってごめんね。灯には後で謝るから」
「うん」
そんな風に言われても、私には何も分からなくて。
ただ、一言しか返すことが出来なかった。