熱情を秘めた心臓外科医は引き裂かれた許嫁を激愛で取り戻す
架純は一度眺めたあと理人の顔を見て、もう一度、書類を確かめた。
なぜなら、どうみても婚姻届にしか見えない――というか、婚姻届だったからだ。
たとえば、看護師の悪戯とか。それとも看護師が間違えて入れてしまったとか。
しかし理人が目の前でわざわざ間違えるはずもない。そんな彼は真剣な顔つきのまま架純を見た。
「先日の緊急オペのときに、君の両親には連絡を入れた。それから町田さんにも説明をしたね」
「……はい」
「すぐに駆けつけられないご両親のために、俺が君の身元引受人になろうと思うんだ」
架純は息を呑んだ。
まさかそのためだけに仮初の契約妻から夫婦になろうというのではと、身を強張らせた架純だったが、すぐに理人が申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「この間、俺は医師としての自分を見失いかけていた。君にもっとはやくかけるべき言葉があったのに。いざというときにしか、うらむやにしか伝えられなかったことも悔いている。無論……君に伝えた言葉にひとつたりとも偽りはなかったといえる」
「……はい」
「君にはきっと俺に対しての誤解があるんだろう。今、聞かせてくれないか? うやむやにせずに、すべて互いの中でクリアにできるようにきちんと説明したいんだ。心と体は繋がっている。君がこれから生きていく上で、どちらも大事なものだからね」
理人の真摯な言葉に、架純は瞳を揺らした。手術に向けての憂いをすべて晴らして臨みたいということなのだろう。彼自身のためにも架純のためにも。
「個人的なことでもいいんですか」
「もちろんだ」
理人は即座に頷く。今日はお互いになんでも落ち着いて話せそうな気がした。だから架純も素直に口を開いた。
「私はあの結納の会食のときに、麗奈さんに嫉妬したんです」
「それはなぜ?」
「美玖さんから縁談の件についての背景を聞かされました。本来、麗奈さんは理人さんとの婚約話が先に出ていたのだと。家同士の繋がりだから兄弟どちらかと婚約できればよかったという事情です」
「たしかに家同士の事情ではあったよ」
「そして結果的には麗奈さんは來人さんを選びました。そうですよね?」
「ああ、違いない」
「それで……理人さんは麗奈さんを気に入っていたからショックだったのではないかと。その失恋の穴埋めに……私の存在を、彼らに華を持たせるというのは建前で……」
なぜなら、どうみても婚姻届にしか見えない――というか、婚姻届だったからだ。
たとえば、看護師の悪戯とか。それとも看護師が間違えて入れてしまったとか。
しかし理人が目の前でわざわざ間違えるはずもない。そんな彼は真剣な顔つきのまま架純を見た。
「先日の緊急オペのときに、君の両親には連絡を入れた。それから町田さんにも説明をしたね」
「……はい」
「すぐに駆けつけられないご両親のために、俺が君の身元引受人になろうと思うんだ」
架純は息を呑んだ。
まさかそのためだけに仮初の契約妻から夫婦になろうというのではと、身を強張らせた架純だったが、すぐに理人が申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「この間、俺は医師としての自分を見失いかけていた。君にもっとはやくかけるべき言葉があったのに。いざというときにしか、うらむやにしか伝えられなかったことも悔いている。無論……君に伝えた言葉にひとつたりとも偽りはなかったといえる」
「……はい」
「君にはきっと俺に対しての誤解があるんだろう。今、聞かせてくれないか? うやむやにせずに、すべて互いの中でクリアにできるようにきちんと説明したいんだ。心と体は繋がっている。君がこれから生きていく上で、どちらも大事なものだからね」
理人の真摯な言葉に、架純は瞳を揺らした。手術に向けての憂いをすべて晴らして臨みたいということなのだろう。彼自身のためにも架純のためにも。
「個人的なことでもいいんですか」
「もちろんだ」
理人は即座に頷く。今日はお互いになんでも落ち着いて話せそうな気がした。だから架純も素直に口を開いた。
「私はあの結納の会食のときに、麗奈さんに嫉妬したんです」
「それはなぜ?」
「美玖さんから縁談の件についての背景を聞かされました。本来、麗奈さんは理人さんとの婚約話が先に出ていたのだと。家同士の繋がりだから兄弟どちらかと婚約できればよかったという事情です」
「たしかに家同士の事情ではあったよ」
「そして結果的には麗奈さんは來人さんを選びました。そうですよね?」
「ああ、違いない」
「それで……理人さんは麗奈さんを気に入っていたからショックだったのではないかと。その失恋の穴埋めに……私の存在を、彼らに華を持たせるというのは建前で……」