熱情を秘めた心臓外科医は引き裂かれた許嫁を激愛で取り戻す
「それは……兄と麗奈さんへのあてつけ、或いは自尊心をフォローするために君を利用したんじゃないか、という疑念を抱いたということかな」
「……はい。もちろん理人さんがそんな人じゃないことはわかっていました。でも、そのとき私は何も見えなくなっていたんです。理人さんのことが……好きだから――」
 瞬く間に涙がこみ上げてきそうになり架純は唇を軽く噛んだ。
 それでも理人と向き合いたくて涙を堪え、彼をまっすぐに見る。
 理人は申し訳ないような苦悶の表情を浮かべたあと、あのときの架純の態度に彼なりに納得したらしく深く頷いた。
「そういうことだったんだな。君に辛い想いをさせてすまなかった」
 理人はそう言い添えてから話を続けた。
「結論からいうとそれは誤解だ。俺は麗奈さんを気に入っていたわけじゃない。麗奈さんが兄を好きだと知っていたからな。兄は鈍いところがある。だから俺が……二人を引き合わせたんだ」
「そう、だったんですか?」
「ああ」
「なんだ……そうだったんだ」
 ちゃんと本人から聞かなければわからないことが沢山あるのだと思い知る。
「しかし君がそう思うのも無理はない状況だった。俺が君に甘えていたんだ。ごめん」
 理人がそう言い頭を下げる。架純はすぐにかぶりを振った。
「私が勝手に誤解していたんですから」
「だが、俺が回りくどいことをしたばかりにそうなったのは事実だ。本音を言えば、君のことはずっと妹のように思っていたはずだった。昔なじみの贔屓みたいな気持ちで守りたいと思っていた部分があった。けれど、それは……いつの間にか変わっていて、そのことに俺は気付けていなかった」
 懺悔するように理人が表情を歪める。
「気付いたのは、君が転院すると言い出したときだ。俺はそのときどうしても君を放したくないと思ったんだ。手遅れになってはいけない、と」
「……理人さんも私のことが……好きだった?」
「ああ。仮初の契約妻に君を縛って、あわよくば……君を振り向かせて自分のものにしようとした。我ながらあまりにも傲慢で、浅はかな考えだったと反省している。すまない」
「……じゃあ、これまでの全部、理人さんの本音だった?」
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