熱情を秘めた心臓外科医は引き裂かれた許嫁を激愛で取り戻す
「あれから難病の症例がどんどん明らかになって君と同じ病の患者を救える確率が高まっている。君は……いうなら女神だったわけだ」
 神格化されてしまうと恐れ多いし、なんだか照れてしまう。
「ものはいいようっていいませんか」
「俺にとってもそうだから」
 そう言って綺麗に微笑む理人に、今度は架純の方が見惚れてしまった。
「理人さんはそれでも医師は神様じゃないって言ったもの。私も女神じゃない方がいい」
「ああ、そうだな。俺たちは血の通った人間であり、君は俺の大事な妻だ。そして俺は君のかけがえのない夫なりたい。これから先ずっと一緒にいるパートナーになっていきたいと思っているよ」
「はい。同じ気持ちでいます。私の大事な旦那様。ふつつかものですが、どうぞよろしくお願いしますね」
 お喋りが静かにやんだあと、どちらともなく微笑み合う。
 二人だけの挙式ではそれぞれが誓いの言葉を宣誓する。

『我々、夫婦は――。
 健やかなる時も 病める時も
 喜びの時も 悲しみの時も
 富める時も 貧しい時も
 互いを愛し 敬い 慰め合い 共に助け合い
 その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?』

 その言葉は、まるで理人と架純の人生そのものを表すみたいだった。
 医師を志した理人、病を患う架純
 一度は互いの婚約関係が、破談になったことがあった。
 けれどまた縁を結んで……喜びや悲しみを共有し、慰めて、愛して、敬って、これから先も共に助けあって生きていきたいと切に願う。
 心と心を繋いで――。
 この命がある限り、真心を尽くしたいと希う。
「……っ」
 泣くつもりはなかったのに、今までのことが巡り巡って思い出され、気付けば瞳に膜が張っていた。
 それから二人は互いの薬指に約束の証を填め、厳かなチャペルの中に流れていく風を感じながら、互いの命の息吹を交換し合う。
 こぼれていったあたたかな涙のあとには、愛しい人の眩い笑顔がはっきりと目の前に見えた。
 もう二度と愛する人を自分から手放そうなんてしない。光の泡に身を投げたりなんてしない。
「愛しているよ。これから先も、この命が続く限り……」
 ちゃんと声に出して。
 互いに言葉にして伝えあいたい。
「はい。私も同じ気持ちです」
 私はこれからもあなたの側で、支え合いながら立って、そうしてずっと生きていくとここに誓う。


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