熱情を秘めた心臓外科医は引き裂かれた許嫁を激愛で取り戻す
「オレ、花屋で色んな人を観察しがちで、そういう雰囲気で感じるんだよね」
 朗らかに話をするハルを見ていると、チャット上の『彼女』だと思っていた『彼』は本当にそのままのハルで、性別を気にする事の方が間違っているように感じた。それよりも、架純は改めてハルと会えたんだと、ようやく実感する。
「こんなところで立ち話してても疲れるよね。えっと、どうしようか。スミレがもしも不安ならオレはこのまま少しだけ話したら帰っても構わないよ」
 ハルが申し訳なさそうに架純の様子を窺っている。彼の誠実な人柄に拒絶する必要はないように思えた。
「私もハルに会って話したいと考えていたから、もっとゆっくりお喋りできたら嬉しいわ」
 架純がそう伝えると、ハルは満面の笑顔を咲かせた。まるで背景に桜が開花して見えるかのようだった。
「やった。じゃあ、近くのファミレスでもいいかな。入ったことある?」
「いいえ。めったにこっちには来ないかも。反対側のバス停とかロータリー側ならあるけど……」
「そっか。あそこ、けっこう美味しいんだよ。あ、スミレお嬢さんがいやじゃなければだけど」
「ええ。喉が渇いたからパフェが食べたいかも」
「いいね。オレもパフェ好き!」
 無邪気なハルに微笑んで、架純は彼に尋ねる。
「ハルはお花とかスイーツが好きなの?」
「まぁ、自然と環境がそうさせたっていうか……スミレも名前をつけるくらいだからそうでしょ?」
「そうね。お花もスイーツも色鮮やかで目を楽しませてくれるから」
「それと……」
「お腹も心も満たしてくれる」
「お腹も心も満たしてくれる」
 同時に言って、互いに顔を見合わせて笑う。なんだかハルとは初めて会った気がしなかった。二人の間に三年以上の友人関係が嘘ではなくリアルに継続していたことが証明され感じがした。それはまるで冒険仲間の大事なパーティーのひとりと再会したような、楽しい気持ちで満たされていた。
 ファミレスに入ると、花火をつけたバースデープレートを前にしたカップルの姿が見えた。大学生くらいだろうか。彼女の誕生日をお祝いしているらしい。彼女は嬉しそうに頬を緩め、彼の方もそんな彼女が可愛くて仕方ないといった様子。微笑ましかった。
 店員にお好きな席にどうぞと言われ、ハルと一緒に少し離れた空いた席に座る。
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