熱情を秘めた心臓外科医は引き裂かれた許嫁を激愛で取り戻す
 要領を得ないハルの言葉に、架純はきょとんとする。
「高辻先生とスミレはいつか結婚するでしょ?」
「えっ!」
「なんで驚いてるの。自分のことなのに」
「そ、それは……その」
 あれはプロポーズだったと思っている。多分、いいえ。きっとそうなのだろうけれど。秘密主義の理人が誰彼構わずに自分のことを言い触らすわけがないし、あたりまえかのようにハルに言われて動揺してしまう。
 顔全体に熱を感じつつあわあわと慌てふためいていたら、ハルがジト目でこちらを見ていた。
「スミレの惚気と昔話の振り返りはそっちにおいておいて」
「ご、ごめん。それで?」
 架純は肩を竦めると、居住まいを正してハルの話の続きを待った。ヤレヤレと言いつつハルは笑みを零す。
「きっとスミレに出会ったのは運命だったんだと思うんだ。もちろん高辻先生とスミレのような関係ではないけど。チャットからはじまった繋がりだけど……気が合うしわかりあえる大事な友達だと思ってる」
「私も。ハルのこと大事な友達だと思ってるよ」
「……ありがとう。だからさ、俺に生きる目標がほしい。そしたらきっと頑張れる。そんな気がして」
 ハルが少し照れくさそうに頬を指でかいて俯いた。それから慌てたように彼は顔を上げて身振り手振りで言い訳をしはじめる。
「あっもちろん、スミレにだって理想のウエディングとか、女の子だし色々考えることあるよね? 迷惑だったら断ってくれたっていいんだけどさ」
 そんなハルの必死な様子がなんだかかわいくて、架純は笑ってしまった。
 架純にとってハルは大事な友達であり、初めてできた弟のような存在に感じていた。実際、話をするうちに三つほど年下だとわかったからというのもあるけれど。
「いいえ。断るわけないわ。私はハルが申し出てくれなくたってきっとあなたにブーケを作ってもらいたいって思ったわ」
「高辻先生に嫉妬されるかもしれないけどいい? なんて」
 ハルが悪戯っぽい顔を覗かせていた。
「えっ」
 まるで見てきたかのように言うのでドキッとした。慌てる架純を見てハルが屈託なく笑う。
「ははっ。ほんと夫婦はよく似るとかカップルって似た者同士になりがちってよくいうよね」
「からかうのはやめてよ、ハル」
 顔に熱を感じながら、架純はハルを軽く睨んだ。
< 99 / 110 >

この作品をシェア

pagetop