極道に過ぎた、LOVE STORY
 間も無くして、ビールとお料理が運ばれてきた。店の雰囲気と同様、見た目も綺麗に盛り付けられている。

 「合格おめでとう」

 康が手にしたジョッキを上げる。

 「ありがとう。でも、こんな高級そうなお店じゃなくても良かったのに」

 私もジョッキを手にした。


 「そうはいかない。合格祝いだし、やっと一緒に夕食にこぎつけたんだから、俺だって力入るよ。で、何かあったのか?」

康の視線が、伺うように私を見た。

 「えっ? どうして?」

 「念願の医師国家試験合格だぞ。その割に、パッとしない顔だなと思ってさ」

 「失礼ね、いつもと同じ、こういう顔よ」

 「それは失礼。だけど、いつもより護衛の車も多いからさ」

 「そうだった?」

 「気づかなかったのか? もう一台、反対側の道路に停まっていた」

 「そう」

 それを聞いて、今夜起きる取引が、ただ事ではないのだと言うことだと考えざる負えない。


 「組で、何かあったのか?」

 私は、箸を持つ手をテーブルの上に置き、小さく息を吐いた。康に話す事には躊躇する。知らな方がいいに決まっている。

 「直接聞いたわけじゃない。だから、分からない」

 「俺が、巻き込まれるんじゃないかと心配しているのか?」

 「巻き込みたいとは思っていない」

 「ふっ。俺を巻き込んだ所で、誰にもメリットにならないだろ。大丈夫じゃないか?」

 その言葉に、今抱えている不安を少しだけ、吐き出したくなってしまった。

 「本当に詳しい事はわからない。ただ、今夜大きな取引があるらしい。そこに薬がからんでいるかもしれない。でも、パパは薬と殺しはしない。だから、何かとんでもない事を考えているんじゃないかと思う。もしかしたら、大きな乱闘になるかもしれない」

 「う〜ん。お父さんは、組を守ろうとしていることは確かだろ。道理は通す人だよ」

 「それはわかっているつもり。でも、なんだか不安なんだ」

 「心配なのは分かる。だけど、一つだけ言えるのは、俺にも幸にも何も出来ないって事だ。とにかく、食えよ!」

 康は、にこりと笑って箸を持ち直すと、鮮度よく光る刺身を口の中に入れた。その姿に、私も箸を持ち直した。蒸し物を口の中に入れる。確かに美味しい。

 この時、私にも、そして康にも何も出来ないのだと思っていた……
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