極道に過ぎた、LOVE STORY
 「はい」

 羽柴の名を光らせたスマホに向かって返事をした。


 「お嬢、よく聞いてください。今、店に梅森の手下が入っていきました。おそらくスカイグループの指示だと思われます。お嬢を探しに行ったのだと思います。

多分ですが、梅森は我々が気づいていないと踏んでます。我々が派手に動くと勘付く可能性があります。康さんと一緒に、裏口から逃げてください。奴らは、目立たないよう一般の客の装いをしてます。くれぐれも気づかれないように」

 「分かった」

 「お嬢、今は、康さんのお力を借りて下さい。決して、一人で無茶な事をしないで下さい」

 「ああ」

 静かに通話を切ると、そのまま視線を康に向けた。


 「康…… ごめん」

 こうなる事は一番避けたかったのに。

 「謝る事なんてない。とにかく今は、羽柴さんの指示に従おう」

 康は、ジャッケとを着るとテーブルの上に置いてあったスマホをポケットに締まった。

 「うん」

 「別々に部屋から出るんだ。俺は一歩先に出て支払いを済ませているから、トイレに行くふりをして厨房の横から抜けろ。俺も後を追う」

 「分かった」

 康が支払いを済ませている後ろを、トイレに向うが、明らかにどこからか視線を感じる。見張られていることだけは分かる。


 厨房に入れば「トイレはあちらです」と、当然怪訝な顔をされる。


 「支払いは済ませましたから、ちょっと通らせてくれません?」

 後ろからの康の声に、厨房のスタッフの顔が変わる。

 「あらあら、何やらかしたの? 持てる男は大変ね? どうぞ」

 厨房のおばさんが、スッと避けてくれた。多分、恋愛トラブルと勘違いしているのだろう。こういう時に、顔がいいのも役立つものなのだと知った。


 康と二人、走って建物の外に出る。入り組んだ裏通りを抜けたのだが、

 「おい! あっちだ!」

 その声に反対側へと走った。康と並んでフェンスを軽く飛び越える。


 だが、その先に数人の男の姿が見えた。思ったより先手を打たれているようだ。

 「どうする? 幸」

 「やるしかない」

 私は、落ちていたパイプらしきものを二本拾い、一本を康に手渡した。

 反対側からも追ってが近づいてくる。


 康と背中合わせの形になる。

 「何人いるんだ?」

 「十人ってとこじゃない?」

 「幸一人相手に十人がかりか。大したもんだな」

 「ふっ。十人でかたつくと思われるとは、舐められたもんだ」

 「へっ。恐れ入りました」


 「あんたら誰だ!」

 上げた声は、薄暗いビルに響いた。


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