極道に過ぎた、LOVE STORY
 こんな危機的な状況なのに、触れられた頬が熱くなってくる。

 「怪我は無いか」

 「このぐらいで、怪我なんてしない」

 そう言っているのに、康の目は悲しげに私を見つめる。

 「そんなに、心配しなくても……」

 言いかけた言葉が遮られるように何かに包まれた。それが、康の腕に包まれているのだと気づくのはすぐだった。

 そして、そのままぎゅっと強く抱きしめられてしまった。


 「俺はどうしたらいい? ただ、幸を守りたいだけなのに」

 「十分守ってくれてる。康をこんな目に合わせるつもりはなかった」


 「このまま、どこかに一緒に逃げてしまえればいいのにな……」

 耳元で囁く康の声は、なぜか苦しそうだった。

 康は、何を言いたいんだろう? このまま一緒に逃げる? どこへ? 何のために? 

 もしかして…… やっとヤクザの娘と一緒にいる事の危険が理解できたのだろうか?


 私は、胸の奥が切なく締め付けられる思いのまま顔を上げた。

 「どうしたんだよ? こんな目に遭ったら、不安にもなるよね」

 「そうじゃないんだ。幸…… ごめんな。何も出来なくて」

 もう一度、康が強く抱きしめた。

 顔を上げると、康の目と重なった。そのまま、康の顔が近づいてきて唇が重なった。

 すべての時間が止まってしまったのかと思うほど、私の体は動かなかった。


 突然、ガタガタと、入り口の方で音がした。

 康の唇は離れてしまった。

 ものすごく、切なくなった……


 「行くぞ1」

 「うん」

 康が私の手を取ると、力強く引っ張った。


 「いたぞ!」

 ビルの外で、男の声が響く。
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