極道に過ぎた、LOVE STORY
 警察署では、羽柴が打たれた経緯。なぜ、あの場にいたのかを説明した。

 パパや組の者、スカイグループの証言とほぼ同じであると、すぐに解放された。

 組の者たちも、ほぼ釈放されたが、パパはそうはいかない。
 それよりもスカイグループという裏組織が逮捕された事のほうが大きいのじゃないだろうか。

 康は轟川の組織に近づくために、私に近づいていたことも、刑事から伝えられた。康本人から、伝えたいと申し出もあったが、私は断った。警察の業務の一つであったと割り切るには、康の口から聞く事を避けた。複雑な感情が、真実を曲げてしまいそうだった。

 話が終わり、警察署の廊下を刑事に連れられて歩いた。


 廊下の先、真っ直ぐ前に立つ康の姿が見えた。

 黙ってすれ違う。

 私を見る康の目は、ヤクザでもなければ、医者でもなく、ましてや私を抱きしめた目でもなく、この場に相応しいとしか言いようのない警察官の目だった。

 康がヤクザの道に入ってしまったらと怯えていた自分に笑えてくる。

 きっと、私は康に恋していのだろうと、今更ながら思い返してしまう自分に呆れる。
 でも、全て、嘘なのだ。
 これは、失恋なのか? 
 初めから無かったものなのか? 
 考える気にもならない。


 「幸……」

 康の声に振り向く。

 つい、さっきまで一緒に戦ってくれる仲間だった。今、ここに立っている男は誰?

 「……」

 なんと言えばいい? 裏切り者と、怒ればスッキリするのだろうか? そんなことを言ってしまえば、まるで、康を信じていたみたいで、情けなくて悔しくなる気がした。


 私は、背中に視線を感じながら、その視線の意味を考える事もせずに、警察署を後にした。


 医師でもなければヤクザになるわけもなく、警察官だなったなんて。

 柄にもなく心熱くなったヤクザにラブストーリーも、ただの情けない笑い話に変わったのだ。


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