極道に過ぎた、LOVE STORY
 警察署を出ると、入り口の壁に立つ影が目に入った。

 何時だろう? すごく長い一日だった。

 眠りたい。


 「玲香?」

 「あっ。幸、お勤めご苦労様です」

 玲香がわざとらしく頭を下げた。

 「捕まった訳じゃない」

 ジロリと玲香を睨むが、玲香のおどけた顔に、緊張した糸が切れたようでホッとした。


 「そうなの? ねえ、お腹すいた。何か奢ってよ」

 「はあ? あんまり食べる気しない」

 「よく考えてごらん。お腹すいているはず。お腹に優しいもの食べて、しっかり寝る。これ、医者の基本。さあ、行くわよ」


 そう言う玲香に連れられて来たのは、私の家だった。

 「ここ、私の家だけど」

 「そうよ。外で食べるのは疲れるじゃない。トモさんに頼んでおいたから大丈夫よ」

 車から降りると、トモと数人の若い奴が出迎えてきた。釈放された事が分かりほっとした。


 ダイニングルームに入ると、いい匂いが漂っていた。

 玲香と並んでテーブルに座る。

 「お待たせしました」

 組の若い奴が、おにぎりと豚汁を運んで来た。

 「わー。無理言ってごめんなさいね」

 玲香が、ほわっと微笑む。

 「とんでもございません。このぐらいの料理でしたら、いつでもおっしゃて下さい」

 運んで来た奴は、嬉しそうに満面の笑みを浮かべている。

 「美味しそう。いただきます」

 玲香は手を合わせると、箸と豚汁の入ったお椀を手に持った。


 私も、黙って手を合わせる。食べ物を見たら、なんだかお腹も空いてきた。

 暖かいお椀を持って、汁を啜るとお腹に染み渡って、ホッとした。


 「康には、会ったの?」

 玲香が、おにぎりを手にして言った。

 「うん」

 私もおにぎりを手に持った、


 「ちゃんと、話出来たの?」

 「ううん」

 おにぎりを頬張りながら、首を横に振った。

 何かを思い出したつもりもないのに、頬に伝わり雫が落ちた。


 何が本当で、どこからが嘘だったのか? 何を騙されていたのか? どこから知らなかったのか?分からない事がたくさんある。


 だって、三年だ。三年も気づかなかったなんて……

 だけど、今は、何も考えたtくない。ただ眠りにつきたい。


 玲香は、康の事も、組のこともそれ以上は聞かなかった。

 「この豚汁美味しいね」

 玲香は、いつもの調子で言う。

 「うん」

 「幸の家は、料理人がいるの?」

 「いや。組の奴が作っている」

 「へえー。お店出せばいいのに」

 玲香は本当に美味しそうに、豚汁を口に運んでいる。

 「うちの家業は店出すのも簡単じゃないんだよ。玲香の家は?」

 「お手伝いさんが作ってくれるわ。そういえば、幸って、料理した事ある?」

 「いいや。調理実習くらいだ」

 「そうなのね」

 「玲香は、料理出来るのか?」

 「まさか。ねえ、私達、女としてどうなのかしらね? まずいんじゃない?」

 「まずいかも……」

 「まあ、いいわ。今夜は取り敢えず、寝ましょう」

 「そうだな」

 こんな時なのに、くだらない会話に救われてい気がする。


 私は、部屋に入ると、そのまま気絶するように、深い眠りに入った。


 ぐっすり眠れば、頭はスッキリしたが、現実は何も変わっていなかった。



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