極道に過ぎた、LOVE STORY
 私は、リビングを飛び出した。

 玄関に映る影に向かって言った。

 「ママ!」

 「幸!」

 目の前に立っていたのは間違いなくママだった。


 躊躇なく、ママに抱きついた。

 ママもぎゅっと抱きしめてくれた。


 「幸…… ごめんね…… 会いたかった」

 「ママ…… 大変だったんだ…… パパが……」

 ママに話したい事がたくさんありすぎて、頭と口が追いつかない。


 「大丈夫。心配いらないわ。全て想定内の事よ」

 「想定内って、パパは捕まるつもりだったの?」

 「覚悟はしていたわ」

 パパが捕まる事を覚悟していた? そう言われると、あの時のパパは驚き一つ見せなかった。


 「でも、何故ママがここに? 離婚したってパパが言っていたけど」

 「そうよ。離婚して、一週間前に再婚したの」

 「はあ? 聞いてないよ」

 「あら? パパ言うの忘れちゃったのね? 口下手だから……」

 ママは嬉しそうにふふっと笑う。相変わらず綺麗な笑顔だ。


 「忘れたんんじゃないでしょ? どういう事?」

 「パパは計算通りに動く人なの。パパの計算は綿密だから大変よ」

 「計算通り?」

 聞き返してしまう? どこからどこまでが、パパの計算なのだろう?


 「そう、幸が生まれた時から、ずっと先の事まで心配して計算してた。先の事なんて何が起きるか分からないのにね。大丈夫よ。後はママに任せなさい。」

 「任せるってどう言う事?」

 「幸は、医者なのだから。自分のやるべき事、やりたい事をやりなさい。その代わり、やるからには真っ直ぐに道理を通しなさい」

 ママの目が真っ直ぐ私を見た。

 「はい」

 私もママの目を真っ直ぐに見た。


 「トモ、幹部を集めてちょうだい」

 ママの言葉に、トモが立ち上がる。だが、周りの男達は、動きが悪い。そりゃそうだ。ママが帰ってきたのは、二十年振りなのだから、ママの顔を知らない組の者も多い。


 すると、ママがスッと姿勢を正した。


 「申し遅れました。轟川組三代目組長、轟川宗一郎の妻、轟川蘭でございます。この度、三代目組長代理を仰せつかりました。何卒よろしくお願い申し上げます

 ママは両手を揃え、ゆっくりと頭を下げた。その姿は、娘の私でさえ息を呑むほど凛々しくて美しかった。


 「はい!」

 その場にいた組の者全員が慌てて立ち上がり、一斉に深く頭を下げた。


 「ママ、ありがとう」

 さっきまで、轟川組の行く末を考え不安になっていた事が嘘のように安堵に包まれた。


 「大丈夫よ。すぐに羽柴も退院するし、パパもじきに出所してくるでしょう」

 私も、背筋を伸ばし、ママの歩く後ろ姿に頭を下げた


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