極道に過ぎた、LOVE STORY
 二日もすれば、彼は一般病棟へと移った。

 「片山さん、痛みはどうですか?」

 「痛いです」

 「そうですか。後、数日で抜歯です。退院できますね」

 「退院しなくてもいいです」

 「それは出来ません」

 傷口を確認しながら、淡々とやり取りを交わす。


 「康って名前、気に入ってたんだ。幸に、康って呼ばれるの好きだった」

 私は、電子カルテを打つ手を止めた。

 「しっかり騙された。まさか、名前すら違うとはね」

 「何を言っても言い訳にしかならないな」

 「そうだな。今更、聞いても仕方ない」


 「ちゃんと医者になれたんだな」

 「そう。医者になった。だから、ここでは私は医者、あなたは患者。それだけの事だ」

 「それでも、また会えたからいいよ」

 「相変わらず、諦めない口だな。流石に、二度も騙されない」

 「騙していたわけじゃないんだけどな」

 彼が、ぶつぶつ言っているのは聞こえてきたが、それには答えない事にした。

 「午後から検査になりますので、準備をお願いします」


 軽く頭をさげて病室を出た。


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