早河シリーズ第二幕【金平糖】
『スパイダーの年齢、性別は不詳、わかっているのはハッキングの腕が桁違いってこと。まさかそいつがカオスにいたとは思わなかった』
「情報屋のあなたでもスパイダーの手掛かりは掴めないの?」
『今のところはまったく。スパイダーだけじゃなくカオス関係の情報は掴むだけで命懸けだから簡単に手出しはできないさ。手出しするとね、こうなるわけ』
矢野は自身の口元を指差した。口元には生々しい傷痕がある。
彼がどうして体を張ってまで情報を得ようとするのか真紀は知らない。矢野に関してはまだまだ、知らないことだらけだ。
『じゃ行こうか』
「どこに?」
『昼飯。俺まだなんだ。めちゃくちゃ腹減ってるんだよね。真紀ちゃん付き合ってよ』
それまで真面目ぶっていた矢野の口調が一転していつもの砕けた軽いノリに切り替わる。
「どうして私があなたのお昼に付き合わなくちゃいけないのよ」
『いいじゃん。スパイダーの情報あげたんだし、そのお礼ってことで』
「あれくらいの情報なら警察でも調べられます!」
『まぁまぁ。今度はもっとデカいネタ持ってくるよ。ね、旨いラーメン屋見つけたんだ。真紀ちゃんラーメン好きだろ?』
(なんで私がラーメン好きなこと知ってるのよ。そうか、早河さんが教えたのね)
かつての同僚の早河仁と矢野は何故か兄弟のように親しい。真紀はニコニコ笑っている矢野を恨めしく睨んだ。
ラーメン好きとしては旨いラーメンと聞けば断るのも惜しい。昼食もまだ済ませていない。
彼女はひとつ溜息をついた。
「わかった。でも美味しくなかったらもう二度とあなたとは会わないからね」
『それは絶対ないない。味の保証はするよ。あっちに車停めてあるから行こう』
(なんだかいつもこの人のペースに乗せられてる気がして悔しい)
意気揚々と歩き出す矢野の後ろを真紀は追った。彼の隣に並び、鼻唄を歌う矢野の横顔を一瞥する。
「その口でラーメン食べられるの? 傷に沁みるんじゃない?」
『真紀ちゃんが“あーん”ってしてくれるなら十杯でも百杯でもいくらでも食べられる。なんなら口移しでも……』
「しません」
頭上に広がる冬の青空。風は冷たいが太陽のぬくもりにホッとする。
街路樹から落ちた枯れ葉が道路の上にひらひらと舞う。まるでバレリーナのように枯れ葉達は軽やかなステップを刻んでいた。
「情報屋のあなたでもスパイダーの手掛かりは掴めないの?」
『今のところはまったく。スパイダーだけじゃなくカオス関係の情報は掴むだけで命懸けだから簡単に手出しはできないさ。手出しするとね、こうなるわけ』
矢野は自身の口元を指差した。口元には生々しい傷痕がある。
彼がどうして体を張ってまで情報を得ようとするのか真紀は知らない。矢野に関してはまだまだ、知らないことだらけだ。
『じゃ行こうか』
「どこに?」
『昼飯。俺まだなんだ。めちゃくちゃ腹減ってるんだよね。真紀ちゃん付き合ってよ』
それまで真面目ぶっていた矢野の口調が一転していつもの砕けた軽いノリに切り替わる。
「どうして私があなたのお昼に付き合わなくちゃいけないのよ」
『いいじゃん。スパイダーの情報あげたんだし、そのお礼ってことで』
「あれくらいの情報なら警察でも調べられます!」
『まぁまぁ。今度はもっとデカいネタ持ってくるよ。ね、旨いラーメン屋見つけたんだ。真紀ちゃんラーメン好きだろ?』
(なんで私がラーメン好きなこと知ってるのよ。そうか、早河さんが教えたのね)
かつての同僚の早河仁と矢野は何故か兄弟のように親しい。真紀はニコニコ笑っている矢野を恨めしく睨んだ。
ラーメン好きとしては旨いラーメンと聞けば断るのも惜しい。昼食もまだ済ませていない。
彼女はひとつ溜息をついた。
「わかった。でも美味しくなかったらもう二度とあなたとは会わないからね」
『それは絶対ないない。味の保証はするよ。あっちに車停めてあるから行こう』
(なんだかいつもこの人のペースに乗せられてる気がして悔しい)
意気揚々と歩き出す矢野の後ろを真紀は追った。彼の隣に並び、鼻唄を歌う矢野の横顔を一瞥する。
「その口でラーメン食べられるの? 傷に沁みるんじゃない?」
『真紀ちゃんが“あーん”ってしてくれるなら十杯でも百杯でもいくらでも食べられる。なんなら口移しでも……』
「しません」
頭上に広がる冬の青空。風は冷たいが太陽のぬくもりにホッとする。
街路樹から落ちた枯れ葉が道路の上にひらひらと舞う。まるでバレリーナのように枯れ葉達は軽やかなステップを刻んでいた。