早河シリーズ第二幕【金平糖】
二葉書房の会議室で香道なぎさは編集者の金子拓哉と打ち合わせをしていた。バッグの中の携帯電話が振動している。
金子に断りを入れて携帯を見ると、早河からメールが一通入っていた。
―――――――――――――――
仕事中に悪い。
有紗が学校に来ていないらしい。
佐伯と神田友梨も無断欠勤していると
松本理事長から連絡があった。
有紗達の捜索は上野警部にも頼んだが、
もし有紗から連絡があれば
すぐに知らせてほしい。
―――――――――――――――
『香道さん、顔色悪いけど、平気? 体調良くない?』
「あっ……すみません。折り返しの電話をしなければいけなくて、少し席を外してもいいですか?」
『いいよ。俺も休憩しようかな』
「ありがとうございます」
金子にぎこちなく微笑んで、なぎさは会議室を出た。廊下に人がいないのを確認して早河の携帯に電話をかける。電話はすぐに繋がった。
早河は5年前に佐伯洋介が住んでいたアパートの隣人から得た証言を基に、ある仮説を立てていた。その仮説を聞いたなぎさは身震いする。
「佐伯先生が美晴さんを殺したかもしれないってことですよね」
なぎさはできるだけ喋る声を押し殺した。いつ人が通るかもわからない廊下で話す内容としては相応しくない話題ではある。
{ああ。日付的に美晴の失踪時期と佐伯が女を怒鳴りつけていた辺りのタイミングが合うんだ。それが美晴ならば、美晴は佐伯に殺され、死体がどこかに遺棄されている}
「そんな……。有紗ちゃん、あんなにお母さんに会いたがっていたのに……」
もしも高山美晴が死亡しているのならやりきれない。
{上野さんが佐伯のマンションに向かっている。もしかしたらなぎさの自宅が佐伯に知られていたかもしれない}
「私の家が? 理事長には自宅の住所は教えましたけど、佐伯先生には……」
{有紗を尾行して突き止めたかもな。あの男ならそれくらいやりそうだと今なら思う。いずれにしても有紗に佐伯に神田、この三人が学校に来ていないのは不自然だ。有紗に何かがあったと考えて間違いない}
聖蘭学園で対面した時の佐伯洋介の温厚な笑顔。あれが作り物だとすれば、佐伯は作り物の笑顔の裏側に恐ろしい本性を隠し持っている。
「美晴さんを殺したのが佐伯先生なら佐伯先生は有紗ちゃんを……」
{……最悪の事態だけは防がないとな}
なぎさが早河と電話をしている様子を廊下の曲がり角で金子が無言で見つめていた。なぎさが話している内容のすべては彼には聞こえないが、“殺した”と物騒な単語は聞き取れた。
彼女がライターの傍《かたわ》らで一体何をしているのか彼は気になって仕方なかった。
金子に断りを入れて携帯を見ると、早河からメールが一通入っていた。
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仕事中に悪い。
有紗が学校に来ていないらしい。
佐伯と神田友梨も無断欠勤していると
松本理事長から連絡があった。
有紗達の捜索は上野警部にも頼んだが、
もし有紗から連絡があれば
すぐに知らせてほしい。
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『香道さん、顔色悪いけど、平気? 体調良くない?』
「あっ……すみません。折り返しの電話をしなければいけなくて、少し席を外してもいいですか?」
『いいよ。俺も休憩しようかな』
「ありがとうございます」
金子にぎこちなく微笑んで、なぎさは会議室を出た。廊下に人がいないのを確認して早河の携帯に電話をかける。電話はすぐに繋がった。
早河は5年前に佐伯洋介が住んでいたアパートの隣人から得た証言を基に、ある仮説を立てていた。その仮説を聞いたなぎさは身震いする。
「佐伯先生が美晴さんを殺したかもしれないってことですよね」
なぎさはできるだけ喋る声を押し殺した。いつ人が通るかもわからない廊下で話す内容としては相応しくない話題ではある。
{ああ。日付的に美晴の失踪時期と佐伯が女を怒鳴りつけていた辺りのタイミングが合うんだ。それが美晴ならば、美晴は佐伯に殺され、死体がどこかに遺棄されている}
「そんな……。有紗ちゃん、あんなにお母さんに会いたがっていたのに……」
もしも高山美晴が死亡しているのならやりきれない。
{上野さんが佐伯のマンションに向かっている。もしかしたらなぎさの自宅が佐伯に知られていたかもしれない}
「私の家が? 理事長には自宅の住所は教えましたけど、佐伯先生には……」
{有紗を尾行して突き止めたかもな。あの男ならそれくらいやりそうだと今なら思う。いずれにしても有紗に佐伯に神田、この三人が学校に来ていないのは不自然だ。有紗に何かがあったと考えて間違いない}
聖蘭学園で対面した時の佐伯洋介の温厚な笑顔。あれが作り物だとすれば、佐伯は作り物の笑顔の裏側に恐ろしい本性を隠し持っている。
「美晴さんを殺したのが佐伯先生なら佐伯先生は有紗ちゃんを……」
{……最悪の事態だけは防がないとな}
なぎさが早河と電話をしている様子を廊下の曲がり角で金子が無言で見つめていた。なぎさが話している内容のすべては彼には聞こえないが、“殺した”と物騒な単語は聞き取れた。
彼女がライターの傍《かたわ》らで一体何をしているのか彼は気になって仕方なかった。