聖女のいない国に、祝福は訪れない【電子書籍化】
「陛下。よろしければ、狼と一緒にこちらへ……。そのままでは、風邪を引いていまいます……」
「俺が近寄るのは、嫌だろう」
「……いえ……。今はまだ、大丈夫です……」
「……後悔するぞ」
「私は、陛下の口から……真実を聞きたいのです……」

 聖女から寂しそうに命じられては、セドリックも断る理由がなかったのだろう。
 彼は狼を抱き上げると、フリジアが眠っていたベッドの近くに置かれていた椅子に座った。

「狼と……心を通わせたのですね……」
「どうだかな」
「がう!」
「一緒に、水滴を拭い取ります……。もう少し、そばに寄って頂けますか……?」
「ああ」
「ありがとう、ございます……」

 フリジアの隣で眠っている羊を起こさないように気をつけながら、彼女は身を乗り出して狼とセドリックの身体に付着した水滴をシーツで拭い取る。

 二人は聖女が身体に触れることを嫌がらなかった。
 じっと不思議そうな目で見つめてくる二人と視線を合わせて。
 口元を緩めたフリジアは、グッショリと濡れたシーツを近くの棚へ置くと、セドリックを見上げた。
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