聖女のいない国に、祝福は訪れない【電子書籍化】
「ムガルデンで過ごした記憶など……思い出したくもありません……」
「リエルル公爵令嬢……」
「これからのことを、お話してもよろしいでしょうか……」
「もちろんだ」

 過去を懐かしみ悪夢のような日々を思い浮かべるよりも、明るい未来のことを考えた方がよほど有意義だ。
 フリジアの提案に、彼はしっかりと頷きながら聞く体制に入る。

「先程、王城の外で暮らす騎士達の姿を目にして、思いました……。私は、心優しい彼らのために……。この帝国で、癒やしの力を使いたいと……」
「いいのか」
「……はい。陛下のお役に、少しでも立てればいいのですが……」

 彼女の覚悟を耳にしたセドリックは、フリジアにもう一度確かめるように問いかけた。

 聖女が心の底からアーデンフォルカ帝国の民に尽くしたいと言っていないのであれば、彼女を酷い目に合わせたムガルデン王国の民と同じだと考えたからだろう。
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