聖女のいない国に、祝福は訪れない【電子書籍化】
「――それから。頼みがある」
「なんでしょうか……」
「俺が道を誤った時は、全力で止めてくれ」

 その言葉を耳にしたフリジアは、困惑した。

(悪逆非道の皇帝と呼ばれる陛下を、どうやって止めればいいのか……)

 フリジアは不安でいっぱいになったが、彼がそう望むであれば仕方がない。

「承知いたしました。私の命は、陛下に捧げます……」

 フリジアは具体的な方法が思い浮かばぬまま、セドリックの首筋に唇を寄せた。

「まるで、騎士の誓いだな」

 誓いの口づけを目にした彼は、物珍しそうに彼女へ告げる。

 フリジアは少しだけ恥ずかしそうに、書庫で読んだある本の内容を思い浮かべてセドリックに伝えた。

「聖女はどの時代においても、争いの火種になる存在であると本で読みました……」
「ああ」
「守られる存在ではなく、君主を守る存在となれ。それが聖女として生き残る秘訣なのだとか……」

 フリジアが学んだ内容を口にすれば、セドリックが難しい顔をしていることに気づく。どうやら、彼にとってはあまり褒められた行動ではなかったようだ。
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