【Quintet】
『戦いに行くのは沙羅なのに俺が弱気になってちゃダメだよな』

 抱き寄せられた沙羅と星夜の顔の距離が近付いて、哀しみの瞳のブルーグレーに艶やかな光が宿った。

『“緊張が解けるおまじない”していい?』
「おまじない?」
『目、閉じて』

 この状況で目を閉じてと言われて素直に閉じる自分は危機管理が甘いのかもしれない。何をされるか気付いても、沙羅は顔を背《そむ》けなかった。

 触れて舐めて絡めたふたりの吐息が交ざり合う。甘い甘い、砂糖菓子みたいなキスに心もとろけてほぐれていく。

運転席側と座席側に仕切りがついていても、こちらの声や音は聞こえている。キスの音や合間の声が運転手に聞こえていると思うと恥ずかしかった。

『あーあ。キスしまくったらリップ取れちゃったね。着く前に化粧直ししないと』

 口元を上げた星夜の唇に沙羅の口紅が色移りしていた。それを指で拭う彼の仕草が艶《なまめ》かしい。

「もう……。色気駄々もれ男っ……!」
『ふふん。俺はUN-SWAYEDのセクシー部門担当だからねーん』

 星夜がUN-SWAYEDのセクシー担当なら他の担当は誰だろう?

知能担当は悠真、元気担当は晴、海斗はクールに見えて子どもっぽいところがあって、四人を兄弟に例えるなら末っ子は海斗だ。

長男が悠真、次男が晴、三男は星夜で四男が海斗……そう考えると面白かった。

『今のキスでまた1ポイントリードかな』
「リード?」
『こっちの話ー。リラックスできたっしょ?』

 緊張が解けるキスのおまじないの効果は抜群。羞恥心は恐怖心を越えるようだ。
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