【Quintet】
 沙羅の父、葉山行成は葉山家の三男。栄吉に従わない行成は葉山家から長年勘当されていたこともあり、沙羅は栄吉とは数えるほどしか会ったことがない。

だが、子ども心に感じていた。
冷たい瞳で人を威圧し屈服させる祖父。
コノオトコハキケン
キライ、キケン、キヲツケロ

「お仕事のお話に私は口出しできません。ですが私は葉山家と結城家の橋渡し役なんて務める気もありません。2009年にもなって、何を時代錯誤な古くさいやり方をなさっておられるのですか? 葉山と結城家が業務提携をするおつもりなら、私と星夜さんを巻き込まずにお祖父様達でご勝手になさればよろしいかと。私も星夜さんもあなたや結城さんの道具ではありません」

 一族で唯一、栄吉に逆らったのは三男の行成だ。その行成の娘が素直に従うはずがない。
栄吉が沙羅を見据え、沙羅も栄吉を見据える。
不気味な静寂が座敷を包んでいた。

 突然、栄吉が笑い出した。豪快に笑う老人を囲む沙羅、星夜、結城は唖然としている。

『沙羅。お前は美琴さんによく似とる』
「お母さんに?」
『あれは行成に縁談の話が来た時だった。行成がまだ大学生だった美琴さんをうちに連れてきて彼女と結婚するから縁談はしないと突っぱねたんだ』

 両親の馴れ初めは散々聞かされている。運命の出逢いは美琴が17歳、行成が23歳の時だ。

10代から数々の音楽コンクールを制していた美琴とギタリストとして才能を発揮していた行成。二人は国内の音楽コンクールの出場者と審査員という形で出逢い、一目で恋に落ちた。
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