【Quintet】
『あーっ! 誰だよ沙羅泣かせたのっ!』
『星夜がセクハラするからじゃねぇの?』

 涙を流す沙羅を抱きしめたのは星夜。それを見た悠真と海斗は兄弟同じ顔で眉間にシワを寄せ、晴が茶化す。

『俺はまだ何もしてねぇよ!』
『まだってなんだ。どさくさに紛れて抱き締めるな』

 沙羅の肩が背後に引かれて今度の行き場は海斗の腕の中。沙羅の頬をむにゅっとつまんだ海斗の表情は子どもみたいに意地悪なのに、優しい瞳をしていた。

『チビスケ。いつまでも泣いてたら目が腫れて出掛けられなくなるぞ』
「チビスケじゃないもんっ!」

一応、身長は155㎝はある。四人が大きすぎるのだ。

『海斗だってどさくさ紛れに沙羅に触れてんじゃん!』
『俺はいいの』
『はいはい、沙羅の取り合いはそこまで。まずは朝飯だ。その後に皆で美琴さんの墓参りに行こう。今日は俺達は沙羅の側にずっといるからね。沙羅をひとりにはしないよ』

星夜と海斗の言い合いを打ち切った悠真の言葉にまた涙腺が緩んだ。

「皆……ありがとう」

 四人の気持ちが嬉しかった。今年はひとりぼっちだと思っていた母の命日は賑やかな朝食で幕を開けた。
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