【Quintet】
 葉山美琴が埋葬された墓は港区の青山霊園にある。葉山本家とは別にして行成が美琴のために作った墓だ。

 青山霊園へは渋谷駅から二駅で行ける外苑前駅で降り、徒歩7分。霊園内の小道を歩いて五人はそこに辿り着いた。

「お母さん。今年はお父さんが来れなくてごめんね。忙しくてどうしても帰国できなかったんだ。でも誰よりも今日ここに来たかったのはお父さんだよね」

白いマーガレットとカスミソウで作った花束を生ける。マーガレットは美琴が好きだった花だ。

「だから今日はとっても素敵な人達が来てくれたよ。この人達がいるから私はひとりぼっちじゃないの。お母さんが死んじゃって、お父さんが仕事でいなくて、いつもひとりだった。でも……今はひとりじゃないよ」

 墓の前で美琴に語りかける沙羅の側には四人がいて、四人は美琴の墓に手を合わせていた。
沙羅の隣に悠真がしゃがむ。彼は線香を備えて墓石を見上げた。

『美琴さん。お久しぶりです。高園悠真です』
「……久しぶりって?」

沙羅の問いかけに悠真は答えない。彼は沙羅を優しく一瞥してからまた墓に語りかけた。

『美琴さんもご存知のように僕達四人は沙羅さんと一緒に暮らしています。沙羅さんは明るくて優しくて、彼女のピアノを聴くと心が安らいで温かな気持ちになります。疲れて帰ってきても沙羅さんの笑顔を見ると元気になれます』

 悠真の一言一言が柔らかな口調で紡がれる。沙羅の左隣に悠真が、右隣には海斗がしゃがんでいた。晴と星夜の気配も後ろに感じる。
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