【Quintet】
『そろそろ戻らないと……』
『仕事中に悪かった。今日、何時に終わる? 海斗や他のメンバーも来てるんだ。皆、お前に会いたがってる』

海斗の名前が出た途端に純夜の表情は強張った。

『海斗、俺のこと何か言ってた?』
『アイツは俺には何も言わない。でも海斗も東京からはるばるここまで来たんだ。お前に会ったら海斗も何かしら言いたいこと言えるだろ』
『わかった。5時には終わるから……』

 純夜は作業着のポケットから取り出したメモ帳に何かを書き記した。破りとったメモには乱雑な字が並んでいる。

『俺の携帯番号と、よく行く喫茶店がこの近くにあるんだ。エンジェルリーフって店で、見た目は古臭いけどコーヒーは旨い。5時半にここで待ち合わせでいいか?』
『相変わらず読みにくい字だなー。わかった。5時半にここな』

待ち合わせの約束を済ませて純夜は工場に踵を返した。

 3年間音信不通だった兄と意外と普通に会話が出来ていたのには自分でも驚きだ。外見の変化はあっても、純夜は星夜の知る純夜のままだった。

字が汚いところは3年経っても変わらない。純夜のメモを握り締めて星夜も皆が待つコンビニの駐車場に向かった。
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