【Quintet】
 純夜達と別れた五人が倉敷美観地区のシティホテルにチェックインしたのは、午後8時を過ぎてからだった。
倉敷中央通りに面したホテルの近くには重要文化財の旧大原家住宅や大原美術館がある。

部屋はシングルルームの沙羅が四階、ツインルームの四人は五階。ツインルームの部屋割りは悠真と晴、海斗と星夜だ。

 ツインルームは赤と茶色の配色でまとめられたモダンな内装だった。
部屋に入るなりベッドにダイブした晴は冷房の温度設定をしている悠真を一瞥する。

『お前の秘密主義には慣れてるけど社長はお前よりもさらに秘密主義だな。ライブの話いつから聞いてたんだ?』
『デビュー前……って言ったら怒るか?』
『まじに殴るぞ』

彼は恨めしそうに悠真を睨む。苦笑した悠真はもうひとつのベッドに腰かけた。
直に冷房が効いてこの部屋も快適な温度になる。

『殴られるのは勘弁。白状するとデビュー前からライブの話はあった。デビューしてからの1年で俺達がどこまで売れたかによってライブの日取りも規模も左右されるって話だった。だから売れなかった場合はライブの話も消える』
『12月って日取りも武道館も俺達の売り上げで決まったってこと?』
『そう。まさか最初から武道館でやらせてもらえるとは思わなかったよ。俺もライブの正式な日程を聞かされたのは先月の終わりだ』

 会場が武道館と聞かされた時は平静を装っていても心は奮い立っていた。出来るとしてもキャパが千人程度の、渋谷のライブハウスが妥当だと思っていた。
< 248 / 433 >

この作品をシェア

pagetop