【Quintet】
『9月にメディア発表なのに悠真に話したのも7月って……。社長はとことんタヌキ野郎だ。けどライブで顔出ししたらこんな風に皆で旅行も行けなくなるよな』
『外出には今よりも気を遣うだろう』
『沙羅を連れて出歩くのも気ぃ遣うよな?』

晴がわざと沙羅の話題を持ち出しても悠真のポーカーフェイスは崩れない。

『行成さんは今後の展開を見越してセキュリティの高いあのマンションに俺達を住まわせてくれたんだ。でも俺達と一緒に住んでいることで沙羅に迷惑がかからないといいが……』
『それこそ沙羅が誰かの女になっちまったら色々大変かもな。……風呂、先入っていい?』
『ああ。俺も少し出てくる。先に寝てていいから』

 カードキーと携帯電話を持って悠真は部屋を出た。一杯飲みたい気分だ。

 エレベーターホールの館内図を見ると地下一階にバーがあった。
地下直通のエレベーターはない。地下に行くにはエレベーターで一階のロビーに降りて、ロビーから地下に続く階段を下る。

バーを利用した人間が客室に戻る時は必ずフロントの前を通ることになる。こんな面倒な構造も、犯罪の種を生まないためだとすればよく考えられている。
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