【Quintet】
 モスコミュール、マルガリータ、ブラッディメアリー、大人の世界は横文字が多い。

「カクテル飲んだことがないから、何がいいのかわからないなぁ」
『じゃあ俺が選んでもいい?』
「悠真にお任せする」
『OK。沙羅はロングでいこうね。……ミモザはどう? シャンパンとオレンジジュースのカクテルだよ』

春に黄色の花を咲かせるミモザ。花の名前のついたカクテルはそれだけで可愛い。

『ミモザはこの世で最も贅沢なオレンジジュースと言われているんだ』
「贅沢なオレンジジュース……! 気になる」
『試しに飲んでみようか』

 悠真が片手を挙げて店員に合図する。酒の選び方もバーでの注文も彼は慣れていた。
悠真は何事にもスマートだ。

沙羅と悠真の年齢差は5歳。しかし落ち着いた雰囲気を醸し出す悠真とは実際の年齢よりも、その差は開いているように思う。
バーに女性を連れて来店した経験もあるのだろう。

 静かなバーで過ごす悠真の隣が似合う女性は、人生の酸いも甘いも知り尽くした大人の女。そう考えると心に棘が刺さって痛かった。

 フルート型のシャンパングラスに注がれたミモザは綺麗なオレンジ色をしていた。もうひとつテーブルに置かれたカクテルグラスには琥珀色の酒が入っている。

「悠真のお酒の色も綺麗……」
『これはアドニス。ブロードウェイのミュージカルから名付けられた酒だよ』

二人はミモザとアドニスのグラスを持ち上げて音を立てずに乾杯した。
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