【Quintet】
 手前から二番目の扉が開いていた。星夜の部屋だ。室内の電気は消えている。

「海斗? どうしたの? 星夜は?」
『……風呂入ってくる』

 海斗は沙羅の顔を見ずに向かいのバスルームに消えた。下に降りた沙羅はコンビニで買ってきたスイーツを冷蔵庫に入れるためにキッチンに向かった。

ダイニングテーブルにルーズリーフの用紙が置いてある。

〈ほうれん草のポタージュのレシピ〉

 綺麗な字で紙に書いてあるものは夕食に星夜が作ったほうれん草のポタージュスープのレシピや、沙羅が星夜に教えてと頼んでいた料理のレシピ達。

胸騒ぎがする。ここは星夜の家だ。ここが一番居心地がいいと、彼は確かにそう言っていたのに……。

『ただいまー。って、沙羅?』

 帰宅した晴と悠真の声も沙羅には聞こえない。晴と悠真が駆け寄った時には沙羅の目には涙が溢れていた。

「星夜が……いなくなっちゃった」
『星夜がいなくなったってどういうことだよ?』
『沙羅、ゆっくりでいいから何があったか話して』

 ダイニングテーブルに散らばったルーズリーフ。ほうれん草のポタージュスープのレシピの最後に書かれた言葉が沙羅の心を突き刺した。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 沙羅が作るご飯が俺は一番好きだよ。
 幸せな時間をありがとう。

         SEIYA
 ____________


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