【Quintet】
 泣きわめく沙羅をなだめて部屋に送った悠真はリビングに戻った。リビングには風呂上がりの海斗と晴がいて、二人とも重苦しい溜息をついている。
晴が顔を上げた。

『海斗に聞いたけど、星夜、親父さんの会社継ぐためにバンド辞めるって……』
『星夜の家の問題は今に始まったことじゃないから驚かねぇよ。こんなに早くにこの展開が来るのは予定外ではあるがな』
『兄貴はなんでそんなに冷静なんだよ。星夜が抜けたら俺達はどうすりゃいいんだ?』

拳を握り締める海斗の声は震えていた。

『俺が冷静でいると本気で思ってるのか? 冷静でいられるわけないだろ。でも星夜の家の問題に俺達は口出しできない』
『だけど現実問題、ベースとサブボーカルの星夜が抜けたら痛手だろ』

 晴の発言に悠真は頷く。誰かひとりでも抜けたらUN-SWAYEDの音楽は成り立たない。

『そのことは星夜や社長と話し合わないとな。晴、俺が頼んだ件はどうなった?』
『龍牙《りゅうが》さんに頼んでみた。龍牙さんの知り合いに探偵がいるみたいでさ、その人に一応当たってみるって。俺らが動いたところでなんとかなるかわからねぇし、あの星夜の親父さんが今まで何もしなかったとも思えないからな』
『……何の話?』

 悠真と晴の会話にひとりだけ取り残された海斗は眉をひそめている。悠真が答えた。

『純夜を捜す』
『捜すって……』
『純夜が見つかっても状況は変わらないかもしれない。だけどもしかしたら何か変わるかもだろ。俺達が星夜にしてやれることはそれしかない』
『……純夜は……あいつは星夜に何もかも押し付けて逃げ出した卑怯者だ』

 濡れ髪を掻きむしって苛つきに任せて立ち上がった海斗はリビングを飛び出した。
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