【Quintet】
 廊下にいた沙羅が恐る恐るリビングを覗き込んでいる。悠真は手招きして沙羅を呼んだ。

「今、海斗がすごい怖い顔して出てきたけど……」
『ちょっとね。海斗が聞きたくない話だったんだ』
「ジュンヤって誰?」

悠真の隣に腰を降ろした沙羅は不安げな顔をしている。泣き腫らした目は真っ赤だ。

『俺らの話、聞こえちまったよな』
「ごめんなさい。聞くつもりはなかったの……」

 晴に謝る沙羅の頭に悠真の手のひらが添えられる。

『純夜は星夜の双子の兄貴だよ』
「星夜って双子だったの?」
『うん。双子の兄が純夜で弟が星夜。海斗は最初は純夜と友達だったんだ。中学の時にね。星夜は13歳まで母親とフランスに住んでいたから、海斗が星夜と会ったのは中学1年の……秋かな。星夜の母親が亡くなったことは話したよね』

沙羅は無言で頷いた。

『星夜が13歳の夏に母親が亡くなって、星夜は日本に帰って来た。日本には星夜の父親と純夜がいたんだ。星夜は純夜と同じ学校に通って、海斗とも友達になって三人でよく遊んでた』
「でもジュンヤさんはいなくなっちゃったの?」

 これ以上の話は悠真の領分ではない。本当は星夜の口から聞くべき話だ。
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